ハリー堀田と ケンちゃんの石 |
文 ・ 画 ぼーずまん
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第12回 〜 9時間経過 〜
結局最後は偽りの自慢話…ありもしない女性遍歴の話で盛り上がって終了となった。 「さて…と…。」 ハリーは1つ大きなあくびをすると、傍らでタタミ2畳分のスペースを占拠している巨大な物体に気が付いた。 「…あ。」 その瞬間、彼の表情は固まり、嫌な汗が額を伝った。 完全に忘却の彼方へと追いやられていた親友は苦しそうな寝汗にまみれ、股間を手でおさえたままイビキをかいている。 ハリーは疲労の限界に近い思考回路を一生懸命に起動させた。 今は目の前に横たわるブタ野郎の命を助けなければならない。 …時間はもう残されていないのだ。 しかし、あせればあせるほど彼の思考は空回りとなり、よりいっそう混乱を招いた。 このままでは…このままでは大切なケンちゃんの命が…! 結局、数度の空回りを繰り返した結果…なぜか彼の脳裏に浮かんだのは数日前に食べたサバ味噌定食だった。 「あぁ…あの店のサバ味噌定食…うまかったなぁ。」 数分間ハリーは記憶の中のサバ味噌定食を堪能し、ヨダレを拭いてから立ちあがった。 メガネのレンズがキラリと光る。 サバ味噌…俺の好物…食べ物… 先程までバラバラに点在していたパズルのピースが凄まじい勢いで結合していく。 尿道結石…尿道の石…まるで豆のような大きさじゃないか! 豆!豆!マメ! …豆が好物といえば…! 「ふみえ!お前の出番だ!とびっきりのショータイムを見せてやれ!」 ハリーは2回手を叩いた。 その瞬間、ハリーの両手の間から1羽のハトが…! 出てこない。 「あれ?ふみえ?どうした?…出番だぜー?」 心配そうに左の袖口に右手を突っ込む。 「ふみえー!」 ようやくハトが…ふみえ(♂)が姿を現した。 しかし、長時間狭い所に押し込められていたうえにケンちゃんの贅肉の下敷きにもなっていた彼はもはや限界だったのだ。 「どうしたふみえ!大丈夫か!?」 ふみえはハリーの手から滑り落ち…畳に叩きつけられると、ヨタヨタと2〜3歩ほど歩いて動かなくなってしまった。 かすかにクチバシがパクパクいっているので生きてはいるらしい。 「ふみえー!!」 ハリーの悲痛な叫びが朝4時の住宅街に響きわたった。 つづく |