ハリー堀田と
    ケンちゃんの石

                                   文 ・ 画 ぼーずまん



             

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  第4回  〜 1時間経過 〜


 【現在PM8:14】

1時間後。

ハリーの目には涙がにじんでいた。

無理もない。状況はもはや最悪に等しい。

1時間前から2人の体勢は全く変わっていない。

ケンちゃんのあまりにも肥大し過ぎた下ッ腹の重みがハリーの腕を圧迫していた。

・・・抜けないのだ。

汗で湿った贅肉に挟み込まれたハリーの掌には相変わらず妙な感触がまとわりついている。

ケンちゃんは泣いている。

ハリーは気が狂いそうになりながらも、必死に理性を保とうと努力していた。

ここで彼が崩れてしまっては誰もケンちゃんを救えなくなってしまう。

「なぁ、ケンちゃん・・・。」

「ぐすっ・・・ぐすっ・・・何?」

「この痛みの原因に心当たりは無いのかい?」

ケンちゃんは鼻を軽くすすると目を閉じ、何か考え事をしている。

アパートの横手を一台の車が通った。

今の状況ではそのエンジン音さえも2人の耳には届かない。

「・・・今日、中東の方で自爆テロがあったってニュースでやってた。」

「ま、まさか・・・ケンちゃんも標的に・・・!?」

「可能性は・・・無くもない。」

ハリーは必死に頭を回転させていた。 眼鏡のレンズが光を反射してキラリと光る。

「ほかに考えられる事は・・・?」

ケンちゃんは目を閉じる。 頬肉に乗っていた涙が頬を伝って落ちていく。

「最近は地球に温暖化というのが進んでいるらしい・・・。」

「温暖化!?・・・もしかしたら・・・それか?」

「いや、ハリー・・・ほかにも心当たりはたくさんあるんだよ。」

ゆっくりとハリーの顔を見るケンちゃん。 目が合う。

「俺は・・・たくさんの業(ごう)を背負って生きてきた。そのツケが回ってきたんだ。」

ハリーは何も言えなくなってしまった。 無言の間ができる。

「今日・・・いつものプリンがたまたま売り切れてたんだ。」

「・・・それで?」

「どうしても我慢ができなかった俺は・・・。」

「まさか・・・!?」

「その『まさか』さ。」

自嘲気味に微笑むケンちゃん。

ハリーの額から汗がひとすじ落ちた。


                つづく


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